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映画「パール・ハーバー」から第2次大戦を考える

Category: 原爆  

映画「パール・ハーバー」から第2次大戦を考える
バートン・バーンスタイン教授

日本の真珠湾攻撃をテーマにした超大作「パール・ハーバー」が公開され、日本を敵国とみなすハリウッド映画は反日感情をあおるのではと日系人は懸念する。しかし、米スタンフォード大学のバートン・バーンスタイン教授(64)は、「米国人の多くは映画を事実とは思わず、全米に反日感情が広がることは考えにくい」と言う。むしろ、映画公開を機に、真珠湾攻撃を含む第2次大戦の歴史を若い人々にどう教えるべきか、両国で冷静に考えるべきだと強調した。【米カリフォルニア州パルアルトで佐藤由紀】

──映画「パール・ハーバー」は注目を集めましたが、映画評は散々です。

教授  恋愛中心の趣味の悪い映画とみられている。評判もよくない。30代以上はもちろん10代でも、映画を歴史的事実とは考えないでしょう。ハリウッドは、ドラマ性や戦闘場面に関心があるのであって、真実の歴史を描こうとは考えていない。

──映画によって、日本への反感が高まる恐れはありますか。

教授  反日感情が起こるのは、米国の経済が悪化し、対日貿易赤字が増し失業者が増えるような場合だ。日系人と日本人が区別できない米国人もいないではないが、大半は職場や学校で日系人、日本人と接しており、日本への反感を日系人にぶつけるようなことはしないだろう。映画を見た若者が、感情に任せて日本人や日系人を侮辱するようなことはあっても、その場限りだ。米国で反日感情が高まる心配はない。

──米国の高校の授業では、真珠湾攻撃に数日かけ、日本への原爆投下は10分で済ます、と聞きましたが。

教授  授業の目的は第2次世界大戦に至る経緯を学ぶことで、1941年12月の真珠湾攻撃だけに限っているのではない。原爆についていえば、自国の犠牲が少ない国(米国)は、どうしても他国の犠牲を強調しない傾向がある。しかし、私の知る限り、高校の授業では原爆投下をやむを得ない選択と位置づけるのが一般的で、米国の勝利のように教えてはいないと思う。

──ハリウッド映画はどこまで政治的ですか。

教授  政治的な意図で映画を製作しようという映画人はほとんどいないが、政治的影響を与えることはある。「プライベート・ライアン」でユダヤ人のスピルバーグ監督は、戦争の悲惨さ、ノルマンディー上陸作戦が欧州解放、とくにユダヤ人強制収容所の解放につながったという歴史にスポットを当てた。だが、反独感情を刺激しようとしたのではない。

──歴史とフィクションを組み合わせた映画では「タイタニック」が有名ですが。

教授  「タイタニック」は、魅力的な俳優が出演する優れた恋愛映画だが、それを歴史とは誰も思わない。ただ、ハリウッドは歴史的事実や異文化に対する繊細さを欠くという過ちを犯しやすい。日系人たちが疑問を感じているとすれば、「パール・ハーバー」の製作者が日系人の受け止め方への配慮を欠いたためだろう。

──宣戦布告が間に合わず、真珠湾攻撃を仕掛けたことで、日本は公正でないと責められてきました。もし攻撃前に和平交渉拒否が伝わっていれば、非難はされなかったでしょうか。

教授  (日本の)大使館内の混乱がなければ、攻撃の少し前に通告はできたかもしれない。しかし、それでも事態は大差はない。戦闘の大半は予告なしか、あっても攻撃の直前というのが一般的だ。米政府は日本大使館あての暗号文を解読し、攻撃の可能性は察知していた。ただ、場所を特定しきれなかった。あとで考えればハワイと想定すべきだったとはいえるが、実際には不確定要素が多すぎた。

──日本が不公正に戦争を始めたという認識が、原爆投下の正当性につながっていませんか。

教授  広島、長崎への原爆投下の直後、トルーマン大統領は日本の真珠湾攻撃を例に引いて発言し、それが米国での認識の背景になった。しかし、真珠湾で日本が軍事施設、船舶、航空機などを攻撃したのに対し、広島や長崎で、米軍は広く一般市民を攻撃目標とした。真珠湾攻撃と原爆投下を同じレベルで比較することはできない。

──日本では歴史教科書の記述をめぐって論争が起きています。米国で歴史教科書はどんな役割を持っていますか。

教授  初等、中等学校では、学校や地域によってどう教えるかが非常に違う。貧困地区で学力に問題のある学校では、教師が基礎的な読み書きや教室内でのしつけなどに時間を取られ、試験のための授業をするのに精いっぱいだ。教科書以外の教材まで手が回らない。他方、教育に熱心な家庭が多い、比較的裕福な地区だと、教師は柔軟に教材を選べ、教科書にどう書いてあっても授業に大きな影響は与えない。同じ教科書を使っていても、米国では地域と学校、教師によって教育内容が相当に違うので、日本とは根本的に違う。

──日本での歴史教科書論争をどう思いますか。

教授  日本は全国共通の教育をしようとしているので、教科書の記述にこだわるのだろう。私が知りたいのは、日本の中学、高校、大学で、第2次世界大戦がどう教えられているのかということだ。

──残念ながら、中高生たちは授業で現代史を十分に学ばないまま卒業しています。

教授  米国でも、初等教育の歴史教育では1940年代で終わるところが珍しくない。世界史を学ばせるのはよいが、多くを詰め込もうとすると、現代史の理解が表面的になる。

──日本は、歴史上の失敗から冷静に学ぶことがあまり得意ではないかもしれません。

教授  米国も同じように原爆投下から十分に学ばず、その後の核軍拡や冷戦に至った。原爆実験をした島の名前をとって、水着を「ビキニ」と呼ぶことなど、無神経さの象徴的表れだ。

──戦後半世紀以上たち、現代史の研究は難しくなってきたのですか。

教授  いいえ、機密文書が次々に解禁され、むしろ研究は容易になった。日本でも同じように未発表の歴史的文書をまとめた出版物が出ているはずだが、これをぜひ英文で出版してほしい。日本語を自由に読める米国の歴史家は少ない。冷静な歴史の理解は事実に基づく研究でしか得られない。


◇  ◆  ◇

バートン・バーンスタイン
1936年生まれ。クイーンズ大卒、ハーバード大学で博士号。専門は米外交史。米国の核兵器開発、日本への原爆投下をめぐる一連の研究で知られる。米スタンフォード大歴史学教授。「フォーリン・アフェアーズ」誌95年2月号で論文「検証・原爆投下までの300日」を発表。新資料をもとに「原爆が戦争終結を早めた」「米兵50万人の命が失われるのを防いだ」という定説を覆し、日米両国で論争を巻き起こした。(毎日新聞 2001/07/03)

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