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ソフトバンクが一人暴走した「光の道」論争

Category: 政治  

なぜこれほど光ファイバーに執着するのか

2010.12.15(Wed)  池田 信夫

最近、テレビで奇妙なCMが放送されている。

宇宙から地球に向かって隕石が飛んでくる。

ソフトバンクの代理店で、商品の案内をする女性がしゃべっていると、

左手が無意識に上がってしまう。客がそれを見て指摘し、

商品案内の女性は「なんか変」と言う・・・。

一見、何のCMか分からないが、これはソフトバンクの「光の道」のキャンペーンである。

 左手を上げるのは、「AかBか」というアンケートのB案(向かって右側)を選ぶという意味らしいが、この30秒のCMだけでは、ほとんどの人は意味が分からないだろう。

 もともと「光の道」は原口一博前総務相が提唱したものだ。当初は「全国に光ファイバーを普及する」という話だったが、特定の物理インフラを政府が推奨するのはおかしいという批判を浴びて、「全国にブロードバンドを普及する」という話に軌道修正した。

 ところがソフトバンクは、文字通り光ファイバーを全国100%に敷設する「アクセス回線会社」案を発表した。

 現在の電話線(銅線)をすべて強制的に撤去して光ファイバーに替えれば、銅線の保守経費が浮くので、3兆円の工事費を賄って余りある。だから、NTTを構造分離して光ファイバーを別会社にしろというのだ。

 これについてはNTTの経営形態を検討する総務省の作業部会でも、賛成する意見はまったく出なかった。NTTも「銅線と光の保守費はそんなに違わないので、その差額で5兆円以上の工事費を賄うことはできない」とソフトバンク案を否定した。

 私も孫社長とUstreamで対談したが、「こんなリスクの大きい計画を実行して、失敗したら誰が負担するのか。アクセス回線会社の株主は誰で、社長は誰なのか」と私が質問しても孫氏は答えず、130枚も用意してきたスライドを一方的に説明した。


孫正義氏の奇妙な執念の背景には何があるのか

関係業界もみんな反対で、すでに自前のインフラを引いている電力業界は「ソフトバンクは自分の金を使わないでNTTのインフラにただ乗りしようとしている」と批判した。


そこでソフトバンクは10月になって、アクセス回線会社に国が40%出資し、NTTとKDDIとソフトバンクが20%ずつ出資するという新提案を出し、「これを政府もNTTも飲まなければ、当社だけでもやる」と主張した。

 しかし、総務省にもNTTにも、この案に賛成する意見は皆無だった。追い詰められたソフトバンクは「光の道はAかBか」という全面広告を新聞に出し、ネット上でアンケートを取った。このA案はNTTの発表した移行計画、B案はソフトバンクの案だ。

 その結果「B案を支持する意見が圧倒的だった」という集計結果を、孫社長が総務省に持参した。しかしこのアンケートは1人で何回でも押せるもので、統計的な意味はない。それも相手にされなかったため、テレビCMまで打ったわけだ。

 最初から実現可能性ゼロの案に、全面広告やテレビCMなど巨額のコストをかける孫社長の執念は、不可解と言うしかない。

 企業戦略としても、モバイル事業に重点を移しているソフトバンクが、NTTも加入世帯数を増やせない光ファイバーに「4.6兆円投資してもいい」という孫氏の話は、投資家の支持を得られないだろう。

 この背景には、最近、ソフトバンクに「つながらない」という苦情が殺到していることがあると思われる。ソフトバンクモバイルの基地局は約4万局で、NTTドコモの半分しかない。多くのパケットを消費する「iPhone」が増えて、ネットワークが負荷に耐えられなくなっているのだ。

 この負荷を電話回線に逃がすため、ソフトバンクは無線LANのモデムを「iPad」に同梱したり、「フェムトセル」と呼ばれる小型の無線局を無料で配ったりしているが、焼け石に水だ。今後5年で40倍になるとも言われる無線通信データ量を支えるには、基地局を100万局以上に増やさなければならず、採算が合わない。

 このため室内の通信を無線LANなどに逃がし、家庭に引き込まれている光ファイバーをインフラに流用して基地局の負荷を減らそうというのがソフトバンクの狙いだ。


しかし、専門家は「無線局の配置は最適化が必要で、行き当たりばったりに簡易無線局をばらまいても解決にはならない」と批判する。


電波の開放を訴えたが周波数オークションには反対

だが、ブロードバンドの普及で本当の焦点になるのは、余っている光ファイバーではなく、激増する無線通信量に対して絶対的に足りない電波の周波数だ。

 この分野では、孫社長が原口総務相(当時)に「直訴」して大きく前進した。

 総務省は今年の春、700/900メガヘルツ帯で国際標準と異なる「ガラパゴス周波数」の割り当てを決めた。ところが、これに対して「次世代のiPhoneなどの国際端末が使えなくなる」という批判が(私を含めて)ネット上で噴出した。

 それを孫氏が原口氏にツイッターでつぶやいたところ、原口氏が割り当ての見直しを約束し、半年の再検討の結果、総務省の決めた原案がくつがえったのだ。

 ところが、もう1つの課題である「周波数オークション」については、「光の道」をめぐる混乱に作業部会の大部分の時間が費やされたため、「時間切れ」を理由に導入が見送られる情勢だ。

 これについて孫社長は「オークションの思想には賛成だが、一部の周波数だけを対象に実行することには弊害がある」と言う。その理由は「放送局もタクシー会社も、NTTドコモやKDDIも、すべての企業が今使っている周波数帯をいったん返上して、その上でオークションをすべきだ」というものだ。

 この論理が正しいとすれば、国有地の競売も、すべての国有地を返上して行わなければならないことになる。

 ソフトバンクの本音は、オークションをつぶして、総務省が「美人投票」で割り当ててくれれば、次は自分の番だという思惑だろう。そういう密室の官民談合が日本の電波政策を歪めてきたことは、孫氏が一番よく知っているのではないか。

 このように孫社長の混乱した発言が、この1年、通信業界を振り回してきた。だが、これによって通信ビジネスへの関心が高まり、今までNTT支配のもとで「物言えば唇寒し」の風潮が強かった通信業界の風通しがよくなったことは大きな前進だと言える。


 ソフトバンクも、今後はもう少し通信規制についての基本的な知識を身につけ、政府と対等の勝負ができるように成長してほしい。



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