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「対中包囲網」の形成に動く日米

Category: 中国  

中国が西太平洋で海上演習 「対中包囲網」の形成に動く日米

2011.06.23(Thu)  阿部 純一

南シナ海における中国とベトナムの対立がクローズアップされている。

 ベトナムでは3週連続で「反中国デモ」が繰り広げられた。さらにベトナム政府は6月13日、中部クアンナム省沖合の南シナ海で、実弾演習を実施。1979年の中越戦争以来となる「徴兵令」も施行(発効は8月から)し、中国に対して一歩も引かない構えを見せている。

 背景にあるのが南シナ海領有権問題であることは言うまでもない。ただし、今回の緊張は去る5月末、ベトナム中南部沖から約120キロ、中国の海南島から南に約600キロ離れた地点でベトナムの探査船が海底資源調査を行っていたところ、中国の監視船がこれを妨害し、資源調査のケーブルを切断したことがきっかけである。

 フィリピンも同様の問題に直面していた。フィリピンの場合、今年3月に同国の石油探査船が中国の監視船に妨害されたことや、同国が主権を主張する南沙諸島海域で、中国が新たな建造物の基礎工事を開始したことに対する反発と批判が高まっていた。

米国がベトナム、フィリピンと合同軍事演習

 ベトナムにせよ、フィリピンにせよ、軍事力では中国に到底かなわない。かなわないのを承知で中国に反発するのは、米国への期待があるからだろう。

 2010年7月、ASEAN地域フォーラム(ARF)に出席したクリントン国務長官が、「南シナ海における航行の自由は米国の国益だ」と述べ、南シナ海の領有を強く主張するようになった中国を牽制した。それ以来、南シナ海についても米中の意見の対立が表面化していた。

 同年8月には米海軍のイージス駆逐艦「ジョン・マケイン」と空母「ジョージ・ワシントン」が南シナ海に入り、ベトナムとの合同軍事演習さえ行われた。2011年も7月に米・ベトナム合同軍事演習が予定されている。その直前に当たる6月末には、米海軍のイージス駆逐艦2隻が参加し、フィリピン海軍と合同軍事演習が予定されている。

 こうして米国が中国を牽制するためにベトナム、フィリピンとの連携を強めれば、日本、韓国、さらに台湾と繋がり、米国の対中包囲網の強化に帰結することは論をまたない。


 しかし、米国は、2011年5月には中国人民解放軍の陳炳徳総参謀長を招き軍事交流を再開させ、6月初めにはシンガポールでゲーツ国防長官と梁光烈国防部長との間で会談を行っている。これらのイベントを通じ、米中の安全保障関係は一見、よい方向に進んでいたかに見えた。ところが現実は逆の方向に進んでいるとすれば、それは安全保障の「現場」、すなわち南シナ海における中国の強引な活動が引き起こしたことになる。

協調を見せながらも相互に牽制し合う米中両国

 もっとも、米中の接触の中にも「緊張の芽」がなかったわけではない。

 6月3日、アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)に出席のためシンガポールを訪れたゲーツ国防長官は、会議開催に先立ち、今回同会議に初めて出席することとなった梁光烈国防部長と会談、両者は米中の安保対話強化で一致した。

 しかし、同会議における両者の発言にはそれぞれの異なった思惑が見て取れた。ゲーツ国防長官は、米国の東南アジアへのコミットメントを確認し、米軍のプレゼンスを維持し強化すると明言。中国の軍事的影響力拡大を座視しない姿勢を明確にした。

 一方、梁光烈国防部長は、中国の台頭は平和的発展であり、脅威と捉えるのは誤りだと強調しつつ、アジア太平洋地域の安全保障情勢についてはいまだに冷戦思考を引きずっているとして、同盟関係に依拠した米国の関与を暗に批判した。

 米中が表向きは協調を見せる一方で、相互に牽制し合う構図がそこにあった。

 さらに、6月7日に「香港商報」紙が興味深い記事を報じた。同紙が陳炳徳総参謀長にインタビューしたもので、その記事によれば、5月の訪米時に、米国政府から外相・国防相レベルの「2プラス2」協議開催の提案があったが、陳丙徳はそれを拒否したという。

 これが意味するところは次の通りだ。5月上旬に米国で開催された「米中戦略・経済対話」では、中国が馬暁天副総参謀長を参加させることで、米中の制服組による米中安全保障対話が実現した。米国は「2プラス2」協議開催によって、米中安全保障対話を政治のトップレベルに「格上げ」しようと試みた。だが、中国の拒絶にあったのである。米国との軍事交流に消極的な人民解放軍が、これ以上米国との交流を深めたくないという意思表示でもあった。

中国艦隊11隻が西太平洋で海上演習

 こうしたことが背景にあり、現実に南シナ海で緊張が生まれると、事態は容易に米中対立の局面へと動く可能性が出てくる。こうした事態の展開に、わが国が関わりを持たないわけにはいかない。最近行われた西太平洋における中国海軍の演習を事例に見てみたい。


去る6月8日から9日にかけて、中国海軍艦船計11隻が東シナ海から宮古海峡を南下、西太平洋に入った。2010年4月10日、同様にキロ級潜水艦、ソブレメンヌイ級駆逐艦など計10隻が東シナ海から西太平洋に進出、海上演習を行ったが、今回はこの規模を上回る艦船が投入されたことになる。

 防衛省統合幕僚監部の発表で確認された中国海軍の11隻の艦船の内訳は、次のとおりである。

 11隻の艦船は3つのグループに別れて宮古海峡を通過した。最初のグループは6月8日正午頃、宮古島の北東約100キロメートルの海域を東シナ海から太平洋に向けて南東進しているところを確認されたもので、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦3隻、ジャンカイ(江凱)II級フリゲート1隻、およびドンディアオ(東調)級情報収集艦1隻の合計5隻であった。

 2番目のグループは、同日午前0時頃、同じ海域を南東進するのが確認されたフーチン(福清)級補給艦1隻、ダージャン(大江)級潜水艦救難艦1隻、およびトゥーヂョン(●中:●は「施」の偏を手偏にした字)級艦隊航洋曳船1隻の計3隻であった。

 3番目のグループは、6月9日午前9時頃、やはり前2グループと同じ海域を南東進するのが確認されたジャンウェイ(江衛)II級フリゲート1隻、およびジャンウェイ(江衛)I級フリゲート2隻の計3隻であった。

 中国海軍の演習艦隊がなぜわざわざ3つのグループに分かれて宮古海峡を南下したのかは不明だが、所属が確認されている艦船がすべて東海艦隊であることから、東海艦隊による演習であることが分かる。また、演習艦隊に潜水艦救助艦が参加していることから、潜水艦が演習に加わっていることはまず確実であろう。

 6月9日、中国国防部は今回の演習について次のように説明した。「人民解放軍海軍艦艇編隊は6月中旬から下旬にかけて、西太平洋の国際海域で訓練を行う予定である。これは定例訓練であり、関連する国際法に沿っている。特定の国や目標を対象としたものではない」

 中国国防部によれば、西太平洋での演習は2008年以来定例化されており、毎年1回実施が計画されているという。


 今回の演習が定例の演習であるにせよ、5月以来の米中の軍事接触、さらに南シナ海で進行中の中国とベトナムとの緊張と併せて考えると、これが中国の東アジアにおける軍事的影響力拡大の一環であることが分かる。

今こそ日米同盟の深化が求められる

 わが国や米国は、中国海軍がかかる情勢下で軍事力をどう運用しようとしているかについて関心を持たざるを得ない。そうした観点で見た時、この演習から様々な示唆を汲み取ることができる。

 まず、2010年4月の前回の演習では、中国艦隊は沖ノ鳥島周辺で演習を行った。この海域は、中国にとっての絶対的防御ラインである「第1列島線」(沖縄─台湾─フィリピン―南シナ海)と、影響力拡大の目標ラインである「第2列島線」(伊豆諸島―小笠原諸島―硫黄島―グアム・サイパン―パプアニューギニア)の中間に当たる。具体的には、米軍の西太平洋における主要拠点であるグアムと中国本土のほぼ中間の約1000キロメートルに位置する場所である。米第7艦隊の空母がこれより中国本土側に展開すれば、空母艦載機の威力にさらされることになるという意味で、重要な海域と言える。

 では今回はどうか。今回、中国海軍の演習艦隊はさらに南に足を延ばし、本土から約1500キロメートルのフィリピン東方海域にまで進出した。

 この海域は、台北─グアム─東京を結ぶ三角形の海域、いわゆる「TGTトライアングル」と言われる防衛上の重点海域から外れており、米第7艦隊や海上自衛隊にとっても「死角」とも言える「守りの薄い」海域である。

 また、現在の情勢に照らして言えば、中国の南シナ海における影響力拡大に反発するフィリピンを東の太平洋側から牽制することにもなる。さらには、日米に対し、中国海軍の遠方展開(パワープロジェクション)能力の進展ぶりを印象付けることにもなる。

 前回の演習同様、潜水艦も動員した演習であるため、日米両国は西太平洋における中国潜水艦の活動にも十分な注意を払う必要が出てくる。

 今回の演習に対し、日本外務省は「静観」の構えだが、海上自衛隊はしっかり観察しているはずである。現在、南シナ海で緊張関係にある中国とベトナムやフィリピンの事例が、将来的に日本も東シナ海等で遭遇するかもしれないことを考えれば、中国海軍の展開能力の進展ぶりをしっかり把握しておく必要があることは言うまでもない。

 6月21日、ワシントンで開催された日米安全保障協議委員会(「2プラス2」)で、日米両国は中国に対する警戒で認識を共有するとともに、日米を中心に地域諸国と緊密に連携し中国に対応する重要性が指摘された。「日米同盟」を軸に、対中包囲網が模索され始めたと言えるかもしれない。

 米軍との緊密な情報の共有、さらに中国海軍の行動に対応した日米合同演習の実施など、これまで以上の「同盟の深化」が求められよう。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/12625

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