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今日ボクが見た風景

闇の中の闇

Category: 事件  

「会長はなぜ自殺したのか」(読売新聞社会部)

 読売新聞社会部の書いたものだが、新潮文庫。2000年の10月に文庫化されている。高杉良のベストセラー「金融腐蝕列島」「呪縛」のノンフィクション版と解説にある。どちらも読んだのだが、この本も一気読みしてしまった。

 会長というのは、1997年に自殺した第一勧銀の宮崎相談役のことである。会長だった1992年の総会屋に対する不正融資の事情聴取の最中に自殺している。第一勧銀といえば、いまシステムトラブルで責任を追及されている「みずほ」グループのひとつだが、会長と取締役は同格で、旧第一銀行と旧勧業銀行から必ずひとりずつ交代で選ばれていたのだそうだ。合併後二十数年経っても、各支店ポストまで一対一でバランスを考慮されていたと言うから、そんな銀行がさらに富士銀・興銀と一緒になって、内部はどうなっているのだろうと思ってしまう。

 MOF担とか、証券不祥事とか、大蔵省や日銀の接待漬けとか、そんなに昔のことではないよなあと読みながら思った。一連の東京地検特捜部による捜査の過程で少なくとも六人の自殺者を出し、新井将敬代議士の自殺あたりから、捜査は明らかに弛んだと指摘されている。新井代議士は日興証券に対して株取引の損失補填を強要していたという容疑で逮捕される直前だったのだが、誰でもやっていることだと周囲に漏らしていたという。銀行や証券会社にとっては、総会屋(暴力団)と政治家の圧力は、断れないという点では同等のものらしい。新井代議士は本人が直接関わっていたから摘発されたが、秘書経由の架空口座となると立件できないだけで、真相は今も闇である。秘書給与の問題でも同じような台詞を最近聞いた気がするが、金融腐敗の方がクリアになったとはとても思えないし、これでは本当に時代劇(おぬしも悪よのう)の世界である。

 それにしても、金を扱うということは、むき出しの欲望を相手にするのだから命がけだ。総会屋との関係を断ち切ろうとした住友銀行の社員は自宅前で射殺されている。妻を殺された一流企業の総会担当者もいた。金の集まるところには、どんな輩もすり寄って来るだろうということは、門外漢にも想像がつく。誘惑も恫喝もあるに違いない。それにしては、一流大学を出て一流企業に入社した、真面目で実直なだけの日本のバンカーはひ弱すぎるのではないかとこの手のノンフィクションを読むたびに僕は思う。言葉は悪いが、金貸しは金貸しとしてのえげつなさや嗅覚が必要で、総会屋(暴力団)の影に怯えて何百億円もの利益供与をしてしまうような人間に、金は扱えないと思うべきだろう。逆に銀行が融資を打ち切って、中小企業の社長を自殺に追い込むこともある。これだけお上や暴力団に弱いのだから……と言えば、現場のバンカー諸氏は何も知らないくせにと言われるだろうが、世間の銀行を見る目はそんなものだ。

 結局はトップの度量なのだと思う。ところが、どれだけのトップが引責辞任したか数え切れないような状態で、組織としての面子だけを守ろうとするから、現場の責任者が殺されたり自殺したりする。彼らは起訴されても組織的にトップは知らなかったことになっているし、いざとなったら自殺してでも組織を守る。殺し文句は「誰のお陰で今の地位があるんだ」である。気配りの人が腐敗に飲み込まれて行く過程の多くは、同じようなものなのだろう。誰のお陰でここまでになったんだと言われて組織を守ってしまうのは、社民党の辻元前代議士だって同じだなあと感じる。そういう義理と人情・犠牲バント礼讃みたいな発想が腐敗の土壌を生むのかも知れない。

 僕も自営業の端くれである。世の中、金で動いているのに、綺麗事を並べるつもりはない。誰もが家族を、社員を、部下を抱えているのだ。けれども、組織と個人、なんと古臭い物語なのだろうと感じてしまう。本書でも、小説「呪縛」でも、第一勧銀の中堅幹部の活躍が救いのように扱われているが、今の三十代ならさっさと辞めてしまっているだろう。組織内の出世競争のシステムは有能なトップを生まないのだ。出過ぎず、失敗せず、気配りを忘れず、そんな人間が地位に押しつぶされて挫折してゆく物語は、はっきり言ってしまえば団塊の世代で終わりなのだと思う。いや、終わりであって欲しい。

<2002.04.26>

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