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地政学が日本経済に味方、「失われた20年」がいよいよ終わる

Category: 政治  

地政学が日本経済に味方「失われた20年」がいよいよ終わる


2011.02.21(Mon)  武者 陵司


エジプトの革命により、われわれは改めて地政学の重要性を思い知らされた。

 人々の運命は地政学によって翻弄されるものであり、経済の盛衰も所詮その結果に過ぎないということは、長い歴史では当然のことである。

 しかし、普段の経済活動や経済分析は、体制が持続するという前提の下でなされており、地政学の大枠の存在を忘れてしまいがちである。ともすると経済の盛衰は経済の論理だけで説明できる、と考えがちである。経済の分析と予測の専門家は、地政学の領域に足を踏み入れようとしないで、全体像を語ろうとする。

 時としてそこに経済分析の死角が生まれる。議論百出して依然として解を見出せていない日本の「失われた20年」の分析とは、まさしくそのようなものなのではないだろうか。

 地政学からのアプローチを踏まえることで、日本経済の全体像は驚くほどクリアーになる。そしてそこから出てくる結論は、驚くほどポジティブなものとなる(詳しくは筆者の『失われた20年」の終わり~地政学で診る日本経済~』<東洋経済新報社、2月28日刊行予定>をお読みいただきたい)。

日米安保が「日本を封じ込める同盟」に

 地政学は長期にわたっての経済の盛衰のカギを握ってきた。近代日本は1867年から1930年代末までの60年間、世界史にも稀な驚くべき躍進をとげたが、それは明治維新による近代国家の樹立によるものであり、1930年代後半から1940年代の経済大破局は、第2次大戦での大敗北による。

 そして1950年から1990年までの40年間、日本経済は奇跡の復興と大成長を遂げたが、それは日米安保体制の賜物であった。日本はアジアにおける自由主義の砦として著しい好環境に恵まれたのである。


 しかし、1990年を境に日本経済の風景は一変、長期デフレに陥った。株価、不動産価格、企業利益、雇用と個人所得など、何をとっても、天国から地獄への激変が起こった。

 その根本的な理由は、日米安保体制の変質にあると考えられる。日米安全保障条約の戦略的意義が「日本を守る同盟」から「日本を封じ込める同盟」へと大きく変質したと考えられるのである。

 90年にソ連・共産主義世界体制が崩壊し、日米の共通の敵が消滅した。また当時、民生用電子機械、半導体、コンピューター、自動車などの基幹産業において、米国企業は日本企業に負け続けた。そこで日本の経済躍進を食い止め米国の経済優位を維持することが、米国の世界戦略にとって最重要課題となったのである。

 当時の論壇では日米安保「ビンのふた」論、つまり米軍が巨額のコストを払って日本に駐留する理由は、日本の軍事大国化を封じ込めることにあるという議論が盛んであった。軍事的従属の下で、日本の政策はアメリカからの要求に翻弄され、その要求を大いに受け入れた。

図表1 日本の失われた20年と日米安保体制の変質
(注: 個人金融資産のデータは統計の変更により、1997年第4四半期より不連続)
出所: 日本銀行、国税庁、日本不動産研究所、ブルームバーグ、武者リサーチ


異常な円高、低コスト化の圧力が日本を鍛え上げた

 日本を経済的に封じ込めるプロセスで決定的だったのは、異常な円高であった。90年代初頭、円は購買力平価の2倍という異常な過大評価となり、日本企業のコストを一気に国際水準の2倍に押し上げた。

図表2 購買力平価と実際の円ドルレート
出所:経済協力開発機構(OECD)、武者リサーチ(以下、同)

 日本の労働者の賃金も2倍となったために、企業は雇用削減、正社員から非正規雇用へのシフト、生産の海外移転など劇的なコスト引き下げを迫られた。

 結果、ユニット・レーバー・コストは大きく低下し、なんとか企業は競争力を維持できたのだが、日本の労働賃金はその犠牲となり、長期にわたって低下し続け、日本にデフレをもたらした。



図表3 主要国の「ユニット・レーバー・コスト(単位労働コスト)」「1人当たり雇用者報酬」「労働生産性」の比較
拡大画像表示

 しかし、この苦しい20年間に大きな成果が獲得されたことを、見過ごすべきではない。


アメリカからの要求と円高に対応していく過程で、賃金だけでなく流通コストや公共料金などが大きく低下し、日本は世界一の高物価国から、世界有数の低コスト国に生まれ変わり、日本企業は著しくスリムになった。

 また海外に生産をシフトしたことで、日本は輸出基地から世界経営の本社へと機能を変えており、いまや日本企業が海外で膨大な雇用を生む状況になった。加えて日本企業はハイテク素材や部品、装置などで技術優位を獲得した。

 これらの、困難な時代の努力の成果は、2010年代、地政学環境が変化する中で顕在化してくるはずである。もはや日本を抑え込む過度の円高は起きようもない。

失われた20年」が終わり順風が吹く時代に

 このように見てくると、蔓延する悲観論とは全く逆に、日本経済の底流には、多くの明るい要素があることが分かる。「失われた20年」に陥ったのは、バブル以前の身の丈を越えた繁栄のツケを払わなくてはならなかったからである。しかし、ツケを払い終わり、新たな順風が吹く時代に入りつつあると考えられる。

 鍵となる地政学環境は急変している。中国の経済躍進と軍事・政治プレゼンスの急速な台頭を受けて、覇権国アメリカが本腰を入れた対応に動き出した。中国という巨大な国に対抗するためにアジア最大の民主主義国である日本との同盟の再構築に着手したのだ。

 日米安保体制は、もはやビンのふたの時代ではなくなったのである。日本を封じ込めてきた過度の円高など、逆風は止み、順風が吹き始めるだろう。

 2011年、米国と世界景気の回復が確かとなり、米国株高と同時に円高がピークアウトし、大きな円安のトレンドが始まる。

 これに地政学環境の順風が加われば、企業収益の回復、賃金上昇、株価・地価の上昇、円高・デフレ傾向の反転が連鎖的に起こり、われわれが目にしている経済風景は一変するだろう。日本が再び繁栄する姿を見られるはずである。


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