内蒙古自治区の騒乱などで、われわれは注意が行きにくくなっていますが、このごろの中国の動向で留意すべきことがあります。それは沖ノ鳥島をめぐる問題で、中国の視線が厳しくなっていることです。

沖ノ鳥島に対する日中の主張や思惑など詳しいことは、当ブログの以前の記事である「沖ノ鳥島を巡る動き」を参照していただきたいのですが、沖ノ鳥島については現在、「島」か「岩礁」かという見解を巡って日中で論戦が繰り広げられています。中国側は軍事的な観点から、ここの沖ノ鳥島の無効化を図りたいとして近年躍起になって論陣を張ってきました。

そのような中、菅首相を本部長とする日本総合海洋政策本部が5月27日、沖ノ鳥島西側に港湾と道路を年内に整備することを決定しました。日本ではこのニュースはほとんど報じられていません。しかし、中国ではその翌日に、「日本が沖ノ鳥礁に埠頭を建設へ。中国側は抗議」と題する記事が「環球時報」から配信され、この記事が中国の各主要メディアに転載されました。

「中国側は抗議」という表題になっていますが、実際の記事にはこの日本側の行動を受けて中国側が抗議した事実は報じられていません。サーチナあたりが、「中国が抗議」といった表題をそのままつけて日本語記事を配信してしまっていますが、それくらいわかりにくい記事であり、環球時報としては「中国は抗議すべきだろ!」といったニュアンスがこのちぐはぐな表題から読み取れます。

反日的なことをいろいろセンセーショナルに報じる環球時報ですから、そのような記事をみた私は「よくあるアジテーションかな」と思っていたのですが、6月2日には今度は北京青年報が「日本が再度埠頭建設へ。沖ノ鳥は『岩礁』にしかなり得ず」と題する国際問題観察員による論評を出し、日本の対応を更に踏み込んで批判しました。

論評では、中国政府の沖ノ鳥島に関する従来の主張を繰り返した上で、「日本は資金を惜しまずに、この島の足場固めをして、『岩礁』を『島』に変え、実質上沖ノ鳥礁を人工島に変えようと試みている。人工島は排他的経済水域や大陸棚を有しない」と指摘し、「日本は『国連海洋法条約』の締約国であるにもかかわらず、国際社会の全体的な利益を省みず、沖ノ鳥礁に関する不当な主張を正当化しようとしており、典型的な私服を肥やそうとする行為である」と論じました。

さらに、「これは中日2国間の争いではなく、日本の私欲と国際社会全体の利益の矛盾である。責任ある国際社会のメンバーはすべて、国際社会の全体的な利益を擁護する義務がある。日本の沖ノ鳥礁における不当な主張について、近隣の中韓両国は明確に反対を表明している」と指摘した上で、「日本は沖ノ鳥礁問題におけるやり方が国際法に明らかに違反し、国際社会共通の利益を侵害しており、必ずや中国を含めたますます多くの反対に遭うだろうということを、認識すべきである」と警告しました。

これらの論調を見てみれば、中国はあくまでも「国際社会の一員として日本に警告する」というスタンスです。しかし、「一員としては少々厳粛すぎる論調」からしても、その後ろにある中国の野望が透けて見えます。新華社がこの記事を尖閣諸島関連の記事と同じ位置に置いていることからして、「日本に侵略された中国の領土」というメディアの認識が読み取れます。多くの日本人はここに「白々しさ」を感じ取ってしまうのではないでしょうか。

その野望を裏付けるように、中国最大のウィキサイト「百度百科」の沖ノ鳥礁の項目には、「沖ノ鳥礁は中国固有の領土である」としっかり書いてあります。これは、中国の最終的な「野望」を示したものであり、国内のコンセンサスなのでしょう。

日本政府は中国側の主張にしっかり反論し、国際社会が納得するような理論作りを形成していくべきです。これからもこの動きに注目したいと思います。




6月3日現在の時点で百度百科の「沖ノ鳥礁」の項目から、「沖ノ鳥礁は中国固有の領土である」という文言が削除されているようです。グーグル中国のキャッシュにはまだ残っているようなのでこちらのアドレスも置いておきます(数日内にキャッシュが変わる可能性もあるのでご注意下さい)。

http://www.google.com/search?hl=zh-CN&source=hp&biw=825&bih=343&q=%E5%86%B2%E4%B9%8B%E9%B8%9F%E7%A4%81&oq=%E5%86%B2%E4%B9%8B%E9%B8%9F%E7%A4%81&aq=f&aqi=g1&aql=&gs_sm=si&gs_upl=1922l1922l0l1l1l0l0l0l0l125l125l0.1

沖ノ鳥島に対する中国の野望 - 中国語翻訳者のつぶやき(2011年6月3日)