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今日ボクが見た風景

中国は菅直人と会った直後に

Category: 中国  
5月から6月にかけて、中国は外交・軍事で目覚ましい押し出しを見せた。パキスタン(本コラム前回参照 )に続いてミャンマーを事実上の衛星国とする動きが、にわかに加速した。

古典的帝国主義外交ミャンマーに

ミャンマー大統領、26日から初の訪中

テイン・セイン大統領(右)。写真は今年5月にASEAN首脳会議でジャカルタを訪れた時のもの。左はインドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領〔AFPBB News

鉄道・パイプライン・港湾建設をワンセットとしてミャンマーに食い込む浸透ぶりは、古典的帝国主義外交の再来を思わせる。ベルリン・バグダッドを鉄道で結ぶというような。

 隣国に自国資産を権益として築く先に、何があり得るだろうか。

 ミャンマーはお世辞にも国家の体を成し切っていない。中国との国境周辺には麻薬の温床があり、反乱勢力がいる。

 資産保全を名目とした北京によるミャンマー内政への干渉は、つとに続いている。3月に初めて「文民」指導者としてミャンマー大統領となったテイン・セイン(Thein Sein)氏の掲げる7段階民主化論は、北京の指導下できたとする有力な説がある。

 それでも国内が治まるには遠大な時間がかかる。統治力の補完と称して中国が一定規模を派兵することすらあり得ぬかと、そんなことまで思わせずにおかない。故事を探れば満州鉄道権益保全を目的に関東軍が押し出した、あれだ。

 そしてここで言うミャンマーの港とは、中国の資金なくしてできぬもの、もちろん先々中国海軍艦船の停泊地となるものである。

各国を5月に呼んだのは偶然か?

 「日中韓サミット」を終え日本から北京へ戻った温家宝・中国首相は、それから1週間も経たぬ5月27日、ミャンマーからセイン大統領を迎えて応接した。就任後2カ月のセイン氏にとって、初の公式訪問先は中国のほかあり得ない。

 ところで5月は中国に、パキスタン、北朝鮮、ミャンマーから最高首脳が、加えてイランからは外相が相次いで訪れた。これを偶然の一致と見るのは無邪気に過ぎよう。

 米国は、イスラエルが反発すること必定の中東和平方針を打ち出し、案の定ネタニヤフ同国首相に蹴られてシドロモドロ状態。リビアの硬直、シリアの動乱そしてアフガニスタンからの撤退秒読みと、注意を要する事態は多過ぎアジアに割く外交資源をロクに持っていない。



日本の出方を北京がどのくらい気にしてくれたかしれないが、被災地に行ってやっただけで相好を崩す首相を眺めては、温氏は日本相手とするに足らずの印象を抱いただろう。

「ランドパワー」のエンジン全開

日中韓首脳、東日本大震災の被災地を訪問 22日に首脳会談

温家宝首相、韓国の李明博大統領と福島産のトマトを頬張って笑みを見せる菅直人首相〔AFPBB News

米日がそんな状態なら、この際南シナ海でこそ中国に順(まつろ)わぬ国々に手を焼くが、陸路抑えにかかれる周縁弱小国で一気にプレゼンスを固めるべしと、そう考えたのが5月の外交攻勢だったのではあるまいか。

 いや「考えて」やったことかどうかはともかく、結果が物語るものとはまさしくそれ。「ランドパワー」のスロットルを思い切って吹かした感じだ。

 そしてこの特徴は、影響力の誇示に狙いがあったかと考えられる対北朝鮮、対イラン外交においてより、ネイピドー(ミャンマー首都)とイスラマバード相手の外交において一層際立つ。

 確固たる実利を狙い、実現のため中国は政軍手を携え合った攻勢をかけたからであって、企業の投資まで巻き込むところ、本格度が段違いだからだ。

 世上、中国外交部と人民解放軍との間に一昨年から昨年にかけて続いた外交上の失敗(地球温暖化会議で米国に鼻白ませ、ノーベル平和賞受賞者を拘束し、尖閣諸島周辺で日本の海保船に体当たりしたなど)を巡る大議論があったと伝わる。

 その反省に立ち、今年は軍人が引っ込み背広の外交官が主導権を握るなどとする見立てがあったけれど、政軍相まっての対ミャンマー(対パキスタンも)外交は、もう少しニュアンスに富んだ解釈を必要としそうだ。

胡錦濤氏、4項目を提案

 5月27日から29日まで北京を訪れたテイン・セイン氏を迎えた胡錦濤・中国国家主席は、ミャンマー相手にいつもこう言うのだろうか、両国関係はpaukphawのそれだと言った。「朋友」の契りを結んだ関係だというほどの意味。

 人民大会堂での首脳会談で、胡氏は4点を打ち出した。その見出しでなく中身を紹介すると第1が「全面戦略協力関係」の構築であって、これは日中で言う「戦略的互恵関係」の「戦略的」が単に「重要な」という修飾語の言い換えに過ぎないのとは違って、軍事色ぷんぷんの「戦略的関係」を作ろうというものだ。



第2はミャンマーの政治力を強めること。2014年、ミャンマーはASEAN議長国に立つかもしれない。米国や欧州、及び腰だが日本もこれには反対だ。ASEAN内部にも同意できないとする見方がある。

 今後中国はミャンマーがASEANで発言力を伸ばせるよう、ASEANプラス3(日中韓)、ASEANプラス中国プラスメコン河流域諸国といった中国の威令が届く枠組みで、しっかりミャンマーを盛り立てていく。

 その代わり、ミャンマーは南シナ海紛争でいつも中国の立場に立つこととなった。

「国境保全」の意味するもの?

ベトナムの中国大使館前でデモ 南沙・西沙諸島領有問題

南沙諸島・西沙諸島領有問題で中国大使館に講義するベトナム国民〔AFPBB News

第3が、近々予定される「経済協力計画」調印と、それが象徴する両国経済関係の強化拡大だ。中国はミャンマーにインフラを敷設し、造ってやった設備を通してガス、石油が中国へ流れる仕組みを早く整えたい。

 そして第4が、国境の共同保全。2009年に起きたように、ミャンマー側から中国へ3万6000人も逃亡する事態を中国は避けてほしいだろう。

 が、これは治安の収まらない一帯をパイプラインが通ることを念頭に置いての合意である。

 互いに守ろうという話は、ミャンマー治安・国軍当局に力がないなら中国が出張って行く可能性を窺わせる。

国家予算の1割融通で鉄道外交邁進

 併せて今回、北京は中国発展銀行を使ってミャンマーに7億6300万米ドルの融資枠を設定、その範囲で資金を融通してやることになった。妙に端数があるが、これをちょうど10倍した額が2011年度ミャンマーの国家予算額である。2倍すると、国軍予算にほぼ等しくなる。額の大きさ、象徴的意味合いを看取すべきだろう。

 胡・セイン両氏が調印を見守ったという9つの合意文書がほかに何を扱ったものだったか、例によって詳細は知りようがない。が、ここに盛り込まれていただろう具体的な話が、2つ3つ見えてきている。

 うち重要度の順で言うと、何と言っても中国・ミャンマー間高速鉄道敷設計画だ。




雲南省・ミャンマー国境にある瑞麗市から恐らくマンダレーを通り、真っ直ぐ伸びてベンガル湾に至った地点にあるカイオックピュ(Kyaukphyu)とを結ぶ810キロメートル。ここに中国中鉄(China Railway Group)が高速鉄道を敷こうとしている。

マラッカ海峡の意味激減へ

瑞麗市はミャンマー領土に食い込んだ場所にある。

 つまり中国からベンガル湾へ線路を走らせる最短ルートがここからカイオックピュをつなぐ路線となるのは当然だが、同じ理屈はパイプラインにも当てはまる。

 現にカイオックピュは、そう遠くない将来に一大港湾として姿を現す。

 石油・ガスを積んだタンカーが引きも切らず現れては、雲南省へ伸びるパイプラインに毎日2000万ドル相当分も石油を流していく見込みだ。

 中国にとってミャンマーの戦略的価値とは、港とパイプラインに尽きる。これで、米国、シンガポールや豪州の海軍、おまけにわが海上自衛隊まで睨みをきかせるマラッカ海峡を通過しないでよくなる。戦略空間の自立度を一気に増し得る。

 ついでのこと、パイプライン沿いに新幹線も敷いたなら、中国の購買力がますますミャンマーへ浸透する。

チェリー(奇瑞)自動車ミャンマー現地生産へ

奇瑞汽車、低価格小型車で米市場への進出狙う - 中国

安徽省蕪湖にある奇瑞汽車の生産ライン〔AFPBB News

けれども重要資産が1ラインに集中し何百キロと延びる体制は格段の防衛を必要とする。ネイピドーに担えない分、手を貸しましょうといって北京がミャンマーに兵を押し出す根拠とならぬとは限らない。

 そこまでいかずとも、ミャンマーを治まりの良い国にするためその内政に干渉していく強い動機を中国は持ち続けていく。衛星国化なのである、事実上の。

 ほかには、奇瑞汽車(Chery Automobile)がミャンマーに工場を作り、年産3000~5000台規模でリッターカークラスの「QQ3 」生産に乗り出すことも約束された。



先行していた軍軍関係

 しかし9本の合意文書を仕上げるには、両国政府の事前協議が欠かせなかっただろう。記録を見ると、例えば5月13日、徐才厚・中国共産党中央軍事委員会副委員長がミャンマーを訪れ、ミャンマー国軍最高司令官と会談している。また政治局常務委員序列4位の高官、賈慶林氏も同時期にミャンマーを訪れている。

 このあたりで、軍軍関係に大きな進展がはかられたのではないか。

 インドには、中国の出方を誇大に見たがる傾向がある。少しは割り引いて聞かなければならないかもしれないが、インド有力紙Times of Indiaなど、このたび中国はミャンマーの港を常設海軍寄港地にすることでミャンマー側から合意を取り付けたと信じて疑わない。

中国、インド洋でプレゼンス確保へ

 そう思って不思議でないのは、マラッカ海峡をバイパスし直接中東にアクセスできるインド洋の重要性を、中国が強く自覚していることは疑いようがないからだ。

 ソマリア沖に船を出し、海賊警戒任務に就かせる中国海軍の作戦はいまだに継続中。その往還に、ミャンマーで必ず碇を下ろす習慣が確立すると、やがて既成事実となってインド洋における中国海軍の存在も当然視せざるを得なくなる――そんな事態を狙っているとしたら。

 2010年8月にGuanzhou(広州)、Chaohu(巣湖)の2艦がミャンマーのティラワ(Thilawa)港へ入り、停泊した事実がある。同種の行為が今後次第に既成事実化するのではないかと、インド人ならずとも危惧せざるをえない。

 北京を中心に地図を眺めてみよう。北朝鮮という一種の手駒。西太平洋米軍勢力とその息のかかった連中を一気にバイパスできるミャンマーという好立地。インドを挟撃するとともに、ペルシャ湾出入り口に睨みをきかすパキスタンとその港グワダル。そして中国抜きには何もできないことを世に知らしめるための、対イラン関係。

 そこを図示したのが添付の地図だ。

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