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責任は政権そのものに【櫻井よしこ 菅首相に申す】

Category: 政治  

【櫻井よしこ 菅首相に申す】
責任は政権そのものに

2011.6.9


菅直人首相への不信任決議案は、首相ひとりでなく、菅政権そのものに突きつけられたものだ。

 去年6月の就任以来、首相は仙谷由人官房長官と二人三脚の菅流政治を実践した。特徴的事柄を時系列で辿(たど)ってみる。

 2010年8月10日、日韓併合条約100年の談話で「痛切な反省と心からのお詫(わ)び」を表明した。仙谷氏は植民地支配で「韓国の方々に言わせれば土地を奪うという実態もあった」と、無知と事実誤認で日本を貶(おとし)めた。植民地時代に日本が朝鮮半島の人々の土地を奪った事例のないことは、ソウル大学経済学部の李榮薫教授ら当の「韓国の方々」が指摘済みだ。

 9月7日、中国漁船が尖閣諸島沖で日本領海を侵犯した。24日、温家宝首相が船長の即時無条件釈放を要求すると、翌未明、菅政権は中国を恐れ即時釈放に踏み切り、それは那覇地方検察庁の判断だったと卑怯(ひきょう)な弁明を展開した。

 29日、中露両国が第二次大戦終戦65周年の共同声明を発表、「ファシスト及び軍国主義」の侵略に勝利した、「第二次大戦の歴史の歪曲(わいきょく)」には断固非難すると宣言した。ソ連・ロシアとの関係で侵略されたのは日本だ。第二次大戦の歴史を歪曲したのは中露だ。だが、菅政権は抗議しなかった。

 11月1日、メドベージェフ大統領がロシア指導者として初めて、日本の北方領土、国後島を訪れた。事前情報があったにも拘(かか)わらず、菅政権は対処出来なかった。3日には抗議のために駐露大使を帰国させたが、早くも7日には大使をモスクワに帰任させた。日本政府の憤りはこの程度で、軽いのだとの印象をロシアに与えた。


結果、13日の横浜APECで、メドベージェフ大統領に菅首相が抗議したが、平和条約締結問題を日露経済交流の進展とからめて提案され、あしらわれて終わった。

 少し戻るが、11月4日深夜、尖閣領海侵犯事件のビデオがネットに流出。中国はそれまで日本の海上保安庁が中国船に体当たりしたと主張し、謝罪と賠償を求めていたが、真実は逆だったことが一目瞭然となった。

 ビデオが証した真実は日本の国益に大いに資するものだったが、仙谷氏はビデオ流出の人物を「犯人」と位置づけた。衆議院予算委員会の議場で首相に示した資料には、政府が手持ちの映像を公開することは「犯罪者を追認するに等しく、悪しき前例になる」と書かれていた。明らかに両氏には国益意識がないのである。事実、今日に至るまで菅政権は事件の全貌を伝えるビデオを公開していない。

 首相が横浜APECで胡錦濤国家主席に会ったのはこんなときだった。嘘をついた中国に胸を張って対峙(たいじ)出来たものを、首相は胡主席を正視することさえ出来なかった。会談ではおどおどと視線を落としてメモを読んだ。それほど中国を恐れるのが首相である。


                   ◇

 菅外交は見るも無惨だが、今年、もうひとつ、許し難い日本国への裏切りを行っている。4月22日、日独交流150周年を記念するとして、日本とナチスドイツの歴史を同一視するかのような決議を強行採決したのである。

 この1年間に菅政権が行ったことは、終始一貫、日本を一方的に貶(おとし)めることだった。


国内政治においてはどうか。年明け、菅政権の閣僚は誰ひとり、靖国神社に参拝しなかった。枝野幸男官房長官は6月6日、山谷えり子参院議員に、今上天皇は何代目かと問われ「存じません」と答えている。日本の歴史や伝統に関心を抱かず、冷たい視線を注いでいると思われる人物が、以前も今も、菅政権を支えているのだ。

 3月11日に戻ってみよう。その日午前、首相の資金管理団体に対する在日韓国人男性の104万円の献金が発覚した。政治資金規正法第26条の2で、3年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に該当する罪だ。首相は辞任寸前に追い込まれたが、午後、大震災が起き、問題は吹き飛んだ。

 それでも5月10日、東京地検特捜部は同問題の告発状を受理した。ところが首相は不正資金を3月14日、返済していたのである。大震災の3日後、幾万の人々が命を失いつつあった悲劇と混乱の中で、国難に命懸けで取り組むと国民に誓った首相の、返金という行動は、姑息(こそく)であること限りない。

 そして今も、復興は進んでいない。被災した自治体は政府の指示や援助の覚束(おぼつか)なさに呆(あき)れつつ、眼前の問題に取り組んでいる。

 原発事故に関する杜撰(ずさん)な情報開示の害も測り知れない。子供たちを守るために、地方自治体は中央政府の指示を待てず、校庭の土を削り取って自己防衛する。国際社会は日本政府を隠蔽(いんぺい)体質だと批判し、我が国の信頼は著しく失墜した。国際政治における日本の影響力は急激に弱体化している。




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