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NHKキャスターに”日本人”について聞いてみた(2)

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NHKキャスターに”日本人”について聞いてみた(2)



高橋 少し話が戻りますが、「どんなところに気をつけるか」というとこでもう一点、それは「経済」。経済のニュースをできるだけ取り上げるようにしています。リーマンショックもそうですが、今や世界の出来事は、国際経済なしに語る事ができません。番組では経済ニュースを出来るだけたくさん取り上げ、その解説も出来るだけするように心がけています。例えばEUの中でユーロ通貨の国々がギリシャショックやスペインといった国々の財政赤字をどうしようか、という時に、ユーロ圏の優等生であるドイツが「俺たちが常に負担をさせられる」と言い始めました。でも、そういうことを折り込んでユーロができたはずなのに、それを嫌だと言い出した。005

では、これをどう報道するか。ドイツとフランスでは全然違う。フランスはどっちかというと、ギリシャやスペインなどその国の代弁のような形でドイツにクギを刺します。それは言ってみればフランスも財政が危ないからなんだけど。だからドイツがユーロから離脱する勢いになったら困る。だから優等生のドイツの言うこともある程度聞かなければならない。となると、フランスやドイツの報道を毎日見ていると、ちょっとずつ変化してくる。お互いに報道が変わってくる。

――イギリスはそれを見越してか、入っていませんよね。イギリスの報道はどうなのでしょうか?

高橋 ドイツがユーロの中で孤立した立場をとることは、EUの結束にヒビが入るから、通貨が違うイギリスも困るんです。イギリスだって財政赤字で大変なので、全体を見ながら無難に新しいスキームが出来て、その中でEUが強化できたらいいなと思っている。ただ、BBCの場合はNHKと同じ公共放送でも、国家の意思からかなり離れたところにあるので、BBCはBBCで独自の報道の仕方があるから、必ずしもイギリス政府の思いとそのまま一致した報道というわけではありません。そこは誤解しないで欲しい。ヨーロッパ各国の見方も、毎日ちょっとずつ変わっている。その潮目を感じるのも、国際ニュースの醍醐味というか面白さです。


●情報を鵜呑みにせず、自分の感性に照らし合わせる

――視聴者にとって、NHKをはじめ民間放送などいろんな情報がありますが、ニュースを見る時に、本質を見極めるコツのようなものはありますか。

高橋 さっき言ったように、すべての放送局にも立場があるので、その放送局が伝えていることを100%鵜呑みにする事は危険だというのが大前提。その大前提に立ったうえで、自分の感性に照らし合わせるということ。日本人である私たちの価値観、そういう価値観に照らし合わせて、この話はどうなんだろうか、と。

――日本ではよく右寄り左寄りといった表現が使われますが…

高橋 もちろん、その人その人の思想、あるいは信念がありますよね。そういうものに則ったニュースの受け止め方、ということになると思います。つまりニュースの真実というものは存在するかといわれれば、その意味では存在しないですよね。その人にとって受け入れられるニュースであったり、受け入れられないニュースであったりするわけですから。その意味でいうと真実がないことになってしまいます。ただ、事実はある。「ここで爆発があって30人死んだ」という事実はある。では、この事実をどう捉えるか、つまり犯人は誰か、なぜこんなことをしたのか、ということになってくると、だんだん推測が入ってきます。誰を批判するかということになってきた時に、自分が受け入れられるかというのは自分で決めることになる。それは難しいこと。だけど、ニュースを受ける側は、私たちキャスターやニュースを作る側だけでなく、見る側も「この人たちはこういうことを言っているな」くらいすべきで、信じ込んでしまうのは危険です。

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●米国滞在で日本がもっと好きになった。

――アメリカに滞在して日本に対する視線は変わりましたか?

高橋 日本をもっと好きになりました。自分が日本人であることを意識させられますからね。結局、自分は日本という国から逃れることはできないし、日本人のものの考え方や日本が持っている価値や価値観といったものは、歴史も含めて大切にしていかなければ、自分が存在している意味が無いと感じた。外国に行って日本をいいと思えたのは、すごくいい体験だったと思います。

――アメリカに対する意識も変わりましたか?

高橋 うーん。笑われるかもしれないけど「人間はみんな同じだな」と感じました。僕は留学したことはありません。英語は自分で勉強してアメリカに初めて行ったので、正直言って大変でした。いろんな意味で。

――日本の昔から残っている国民性というものも、徐々に変わってきているように思いますが、そういったことは今後どうしたらいいのでしょう。こういうところが大切、こういう所を残した方がいいなどありますか?

高橋 僕がいま一番考えているところで、難しいと思います。よく昔は良かったと言いますが、じゃあ、江戸時代の封建制度が良かったの?身分差別があった時代が良かったの?親を大切にしたり家族を大切にする制度は素晴らしいものがあるけれども、その時代のことを考えると、いいことばかりではないですよね。だから、僕は未だに答えが出ません。ずっと考えています。僕は昔の大家族制とか憧れています。親孝行するとか、滅私奉公とかね。自分を社会のために、より大きな公のために生かすという精神は好きだけれども、それが戦争に利用された動きもあるわけです。うまくそこは自分の中で答えが出てないですね。永遠の課題というか。日本人はどうあるべきなのかというのは、これからも考えなければならない。

――日本とドイツは比較的真面目というか、勤勉さという面で国民性が似ていると言われていますが…。

高橋 そういう民族のひだというのは、ドイツのメディアから感じたことはないですね。むしろ彼らは東ドイツと合体して大きなドイツになり、自分たちの国をどうしようかということに一生懸命で、ユーロというEUというものを背負う中で、自分たちがこの地域で生きていく、引っ張っていくかということに神経を注いでいる印象を持ちます。それを勤勉と言えば勤勉ですが、それと日本人とを関連させるのは、歴史的な経緯が違うし、現状も違うのでそれを同じと言うにはちょっと無理があります。

――アジアの中の日本で見ると、日本はどうしていくべきか、国民はどうしていくべきかというのはありますか?

高橋 アジアの中で、もっといろんなことにコミットすべきだろうなと。アジアの中で、日本という国は信頼できる国のひとつです。ヨーロッパと違って、アジアは本当に多種多様な国家が集まっていて、独裁国もあれば、ひとつの党が支配している国もあり、政治体制から国民の暮らしぶりまで大きく違う。ヨーロッパと違う所はそこ。その意味で、アジアの中でどの国を中心にして話を進めていったらいいんだろうとみんなが思っている。いま中国がとても大きな国になっているので、多くの国が中国を見て、中国がどう考えているかを基本にして動いていますが、アジアの中で日本は西側諸国の一員でもあり、つまりサミットのメンバーであり、日米安全保障条約という体制を持っている国でもある。その意味で、安全保障から経済からさまざまな面で日本がリーダーシップをとる資格は十分にあるはずだと思います。ただ報道からは、そういう話が出てこないので、多分、各国が期待している期待値より、実績はあがっていないだろうなという印象は持ちます。

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――日本のメディアは、海外からどう見られているのでしょうか。

高橋 例えばフィードバックというか、尖閣諸島の時に韓国のKBSなどが、日本のNHKが、日本のメディアがこう報じていますよということはあるけれども、別にそれは日本がこう報道しているという事実を伝えているので、日本のメディアはこういう見方だというのは意外とない。その意味においては、ひょっとしたら中立に報道する国と見られているのかもしれない。でも、そこは分かりません。

――日本の自衛隊は海外から軍隊のように見られることがありますが、海外のメディアはどう報じていますか?

高橋 自衛隊についていいとか悪いとかいう報道はほとんどないですね。ひょっとしたらですが、10年、20年前なら違うかもしれないのかもしれませんが、少なくとも僕がキャスターをやっている07年から、自衛隊それ自体がうんぬんというのはないです。

――日本は憲法で軍隊を持たないということになっていますが、海外で自衛隊は軍隊のように見られている。日本のそういう矛盾について高橋キャスターはどうお考えですか?

高橋 今の話について、私は矛盾だと思っていません。ただ一般的に言えば、すべての国に矛盾があります。“民主主義”と国名にうたっている国でも、民主主義ではない国はいっぱいある。だからすべての国にはあらゆる問題、矛盾があるんです。それを解決するかしないかは、国民の意志であり、国際世論を見た国民の意識。結局、意識して変えていくのは国民。矛盾があるから問題だとは考えたことはないし、そう考えるのではなくて、それこそさっき言った相対性です。何かひとつひとつの出来事があって、それは世界の基準から見て問題なのかどうか。一番いい例が捕鯨ですね。「捕鯨は日本人にとっては固有の文化である」という意見が一方にあり、「クジラを殺すのは野蛮だ」という意見が一方にある。世界の情勢を見ると、クジラを守ろうと言っている国が多数派です。では、少数派である捕鯨を守ろうという立場を、私たちはどう受け止めるのか。クジラを捕って食べるという文化を残すべきなのかどうなのか、ということもあります。そういう意味で言うと、自分たちの価値観は外界の価値観に常にさらされているわけです。そういう中で、自分たちの意見を世界に通すためには、あるいは通すからには、やっぱりそれなりの努力が必要になります。

――努力と言いますと…

高橋 外交的な努力もあるでしょうし、いろんな宣伝もあるかもしれない。あるいは理解ですよね。あなたたちがしていることは気に入らないけれども、あなたたちがしている、あなたたちがしたいということは理解できる、と言えるかどうか、あるいは言ってもらえるかどうか。すべての国際紛争はそこなんです。尖閣諸島もそうです。そう言う部分で、外交というのは常に努力していかなくてはならないし、その努力を勇気を持って行う国は、世界から一目置かれるわけです。

――公平性を持ってという…

高橋 公平性ではなく、お互いに価値が違うということ。宗教だってそうですね。お互いの利益がガツンとぶつかる。パレスチナとイスラエルにしたってどう解決していくか、それはお互いに歩み寄らなければならない話しだし、すべてに通じる。当然、簡単じゃないから、今までずっと続いている。だけど、譲りたくないから、永遠に戦うのかといったら、ベルリンの壁が無くなったようなことが起きるかもしれない。その瞬間にもし立ち会えたら、それはすごい。それも国際ニュースの醍醐味。チェンジの瞬間というか、価値観が融合する時があるかもしれない。逆に言うと価値観がどうしても合わずに戦争になってしまうこともありますが…。それは悲しいけれど、ぶつかるか融合するかは、まさに国際ニュースの魅力というか、私たちがしっかりと見ていかなければならない部分です。


●視聴者からの意見は頭の中の壁にペタペタ

――視聴者の意見について、フィードバックというのはあるんでしょうか。

高橋 あります。みなさんすごくよく見ていて、本当に些細なひとことに反応が来ます。「おはよう世界」のキャスターになったばかりの頃、中国中央テレビがあるニュースについて政府の姿勢をそのまま伝えるような報道があったんです。その時に「中国中央テレビのニュースをそのままお伝えしました」と言ったところ、「そのまま」の部分に反応した人がいて、「高橋キャスターの言った『そのまま』っていう所は、キャスターが中国中央テレビに対して思っていることなんですね」と敏感に反応する人がいました。それはありがたいと思うと同時に、怖いとも感じました。言葉の難しさというか、それはみなさんちゃんと見ていらっしゃいます。

――視聴者からの意見を参考にすることはありますか。

高橋 多くの人たちはテレビを見るだけで、意見を寄せてくれるところまでしてくれませんね。手紙を書いてくれる人は、思いがどういう形にせよある人たちだから、そういう人たちの思いはできるだけ受け止めるようにしています。でも、それこそ右左いろいろな意見があるわけだから、そういうものは受け止めて、僕の頭の中の壁に貼っておくというのかな、「こういう意見もあるよ」「こういう意見もあるね」とペタペタ貼っています。今はいっぱいになりましたけど(笑)。だから思い出した時にふと思い返して、その壁を見て張り紙を見る感じはありますけれど、完全にそれに影響されることはありません。ただ、ありがたい意見もたくさんあるので、全部頭の中に貼ってありますよ。

――なるほど。海外ニュースの最前線で活躍している高橋キャスターならではのご意見、本当にありがとうございました。

◆まとめ

これからは、海外メディアや海外の情報に対して、そして日本人である私たち自身のことについて、改めて振り返ってみるのもいいかもしれない。いい悪いではなく、違いを意識したり、ひとつの事実に対していろんな方向から見てみると、また新しい発見ができそうだ。

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